不動産取引の基準を示す地価公示法には「公示区域内において、土地の取引を行う者は、公示された価格を指標として取引を行うよう努めなければならない」(第1条の2)と規定(土地取引者の責務)されています。
しかし、実際の売買取引においては、公示地価を基に売買価格を決定することはほとんどありません。
とくに市況が良く、土地取引が活況であるときは、公示地価を大きく上回る価格での取引もたくさんあります。逆に地価下落の傾向がある時などは公示地価を下回る売買取引もたくさんあります。
原因としては、調査に時間がかかることと、不動産取引を専門に扱う人が算出するのではないため、公的価格は実勢価格の動きに遅れがでてしまうからです。実際の取引では立地や地形、建物の経年劣化などの個別要因によって取引価格が大きく変動することがあるため、売り手と買い手の需給バランス、価格交渉などによって取引価格が形成されます。
公示地価や路線価などの公的価格は、土地価格そのものを決定していくものではなく、上昇あるいは下落といった土地価格相場の全体的な傾向をつかむための指標として考えたほうが無難です。
土地の相続税や贈与税がからむときは、路線価の変動が税額に大きく影響してくることがあるので、そのような際には正確に把握することが重要となってきます。
路線価の違いは、売り出し価格設定の参考指標となる?
前述のように公示地価と実勢価格とはかけ離れているケースも多く、「公示地価の8割が路線価の目安」といわれていますが、路線価と実勢の取引価格も同様に乖離しています。
路線価(相続税路線価)は相続税や贈与税を算出するためのもので、一般的な土地取引に直接影響は及ぼしませんが、都市部ではほとんどの公道に対して路線価が付けられているため、近隣の売買事例と組み合わせれば、その割合(路線価の比率)でおおよその傾向をつかむことが可能です。
例えば、ある土地の売買価格を算出したいときに、近隣の土地の売買事例が1平方メートルあたり200万円だった場合、その土地の路線価が110万円、対象の土地の路線価が2割低い88万円だったとすれば、売買価格は160万円前後と予測することもできます。
これをもとに、不動産流通機構(REINS)に登録されている他の売り出し物件の価格や条件等を参考に、取引されやすい売り出し価格を設定することが重要です。
地価最高額地点とは?
路線価や公示地価などが発表されると、地価の最高額地点が併せて公開されます。全国の最高路線価として30年以上連続で最高路線価となっている東京都中央区銀座五丁目の銀座中央通り(鳩居堂前)が有名で、公示地価の最高額地点は銀座四丁目(山野楽器銀座本店)、基準地価の最高額地点は銀座二丁目(明治屋銀座ビル)などが例年トップとなっています。 ではなぜ、その隣接地は最高価格ではないのでしょうか?
これは公示地価や基準地価が、選ばれたポイント(標準地または基準地)の中だけでのランキングとなっているためで、選ばれていない場所はランキングに出てきません。
大都市部の路線をほぼ網羅する路線価での「最高路線価」地点が地価最高額地点に近いと思われます。
実際に取引される価格はもっと大きな金額になることも考えられますし、路線価よりも公示地価や基準地価のほうが高額となると思われます。
2011年改定の路線価の変動率算出方法
これまで、標準宅地の価格を合計してから平均を出す「加重平均」の方法が採用されていた平均変動率の算出方法が、2011年に変更され、変更後は各地点の変動率を単純平均するようになりました。
これにより従来よりも変動率を表す数値が小さくなるため、2010年以前の旧変動率と比較する時には注意が必要です。
変更後の算出方法は公示地価や基準地価と同じものとなっています。